忍者屋敷からの脱出 第4章

 男達は牢屋の前で縄を乱暴に解いた後、文字通り2人を中に放り込んだ。晴彦がなんとか倒れることなくその場に踏みとどまり、バランスを崩した梨奈を抱き留める。男達は牢屋に鍵をかけると何を言うこともなく牢屋の前にある階段を上っていった。段を上る靴音が段々遠くなり、やがて聞こえなくなる。もしや監視役が戻ってくるのではないかと緊張した面持ちで再度耳を済ませるも、しばらく経っても階段を降りてくるような音は聞こえなかった。2人は監視カメラの類いが設置されていないかを念入りに調べ、それらが1つも無いことを確認すると晴彦が履いていたスニーカーをおもむろに脱ぎ、靴底をちょいと弄る。すると、上手いこと隠していたピッキングツールがそこから姿を現し彼の手に収まった。


「身体検査位した方がいいよ。まあ、俺みたいな奴はレアだろうけど?」


 晴彦は牢の錠前を取り出した道具を使って弄り始める。ほどなくして、カチャンと言う音が響いて牢の扉が古めかしい音を立てて開いた。2人はさっさと牢の扉をくぐり外へ出ると、目の前にある階段をじっと見据える。


「行くしか、ないよね」
「ああ。じっとしてても仕方ないしな」


 2人は頷き合うと階段へ足をかける。それは拘束され、大人しく天魔一族の言いなりになっていたときとは違う、大きく、力強い、一歩だった。